
ブラックホール
ふとした瞬間、人は心の目を開く時がある。
目の前にある目に映る物だけが、この世に存在している訳ではない。目には映らなくても、やがてそこに育まれる命や、その生命の営みに心が揺れる。
降り積もる雪を全身に纏い、雪化粧したその雪の下の木々は枯れ枝だが、やがて春の訪れと共に若々しい葉をその身に付ける。
その生命の営みは、まさにそこで行われているのだ。
スタイルモダンの流儀である「植物と対峙する」その時の過ごし方に全てがある。植物と黙って向き合い、ただひたすらに植物を活かすことを、その魅力を開花させることに全身全霊をかける。
出会った瞬間、まるで夢か幻でも見たかのような強烈な思いに駆られ、創作活動を始める。
しかし、その植物が輝かない・・・。
そんな経験もある。まさにこのセラトスティリスとの出会いがそうであった。初めてこの子と出会った瞬間、心奪われた。だが、活かせない。
なぜだ?
ブラックホールの中に吸い込まれてしまった。そんな気分を味わった。初め出会った時のあの時の強烈な印象は何だったんだろう。
合わせる器も選べない。そんな日が続いた。
しばらく経ってから、ふとセラトスティリスに目が行った。細く尖った無数の葉のその根元に、小さく可憐な装いで花を咲かせていたのである。
茶色い葉の根元から、こんなにも可憐な花が姿を現すとは!
見えた!
あの時、この花を付けた姿が私を呼び止めたのだ。
勿論その時、目には見えなかった。一気に創作意欲が湧き、可憐なこの花に視線が行くようにと、細長い筒状の器を選んだ。白く透明感のある花が、より美しく見えるようにと、石を砕きパウダー状にした素材で再度成形した繊細な仕上がりの石の器を合わせた。
あっという間に花は散った。
つかの間の出来事だった。
この作品には「幻ーfantasy」と名付けた。
生命の営みは繰り返される。また訪れる至福の瞬間や、まだ見ぬ幻と出会う為に、この心の目を更に研ぎ澄ましておきたいものだ。
作品No Fe08003
題目:『 幻 - Fantasy 』
参考価格 ¥8,500.-
|