
奇跡的だ!
ひょろひょろと不安げに伸びていながら、何故か見る物の心を掴む力強さを、こいつは持っている。
左右に傾きながらも、絶妙なバランスを保ち、真っ直ぐに伸びようとする様によるものなのか?
いや、てっぺんに申し訳ないように付けている花芽が、生きる力を表現しているからかもしれない。
どちらにしても、葉と葉の間隔が狭かった幼少期を経て、力を蓄え一気に大人の階段を駆け上がったこの瞬間は奇跡的だ!
この瞬間は、人間の栽培技術がいくら発達しようとも、絶対に作る事のないであろう植物の真の姿である。
たぶんこの子はインテリアグリーンとしての条件は満たさないかもしれない。
しかし、この心揺さぶられる想いを止められずに取りかかった作品である。
この子をもっとも生かすべきポイントは、もちろん『不安定さと真っ直ぐな力強さとの共存』である。
スタイルモダンでは、器を選ぶ際に心がけるべき流儀がいくつかある。
例えばこの子の場合『不安定』という要素をどう表現するかで、伝わるテーマが変わってしまうのである。
強調しすぎると、緊張感をかき立てるモノになるし、弱めすぎると生かすべきポイントがぼやけてしまう。
私が選んだ器は、地面との接地面は小さいが、上部はどっしりとした厚みがあり両端がせり上がっている器である。
どっしりとした安定感と接地面の小ささが共存する器のシルエットは、『不安定さと真っ直ぐな力強さ』という相反する特徴を兼ね備えるこの子と共鳴しあうのだ。
また、『真っ直ぐな力強さ』というもう一つのポイントを、器の色を使って表した。ピュアな心を連想させる白い色で『真っ直ぐさ』を表現したのだ。
そして一番気に掛けたのが植物のありのままの姿に、この子の奇跡的な魅力があること。
この魅力を引き立てたくて、手のぬくもりの伝わる質感の器にこだわったのだ。
この器にはもう一つ気に入ったところがある。
白で全面を塗ってしまうと人為的な不自然さを感じてしまうが、この器は植口に薄く赤い色を配すことで柔らかさを生んでいる点である。
こうしてスタイルモダンの流儀により新たな魅力を持ったこの作品には『昇天』という題を命名した。
流通品としては不合格とされるヒョロヒョロの樹形も、自分の持つ個性として輝かせることで、圧倒的な生命力を発揮する。
そして、見る者の心に語りかけて来るのである。
この作品はシンプルでモダンな空間で愛でてもらいたい。
華美な装飾がなくとも、心で目で感じる「侘び寂び」の感性を生む空間が生まれる。
私たちにとって、それがどんなに贅沢であるかがわかるはずである。
作品No Oc-070010
題目:「昇天ーSyouTen」
参考価格 ¥12,000.-
|